【300字SS】物語(おとぎばなし)を綴る人
また彼女がテレビに出てる。私の本を手に。直木賞受賞作家の原点と称する、 世界でただ一冊の手作り絵本を得意 気に掲げて嘘ばかり。 近所というだけで仲良くなれた日々、恒常的な別離。幼 かった。善悪がわからない程。だけど。 ―――借りパク女。それはあんたのものじゃない。テレ...
【300字SS】冬になったら思いだして
お湯をしっかり沸騰させて、たっぷり空気を含ませる。 小さめの湯飲みに注いで、待って、空の急須に移す。湯飲みは冷まさないように、 また熱湯を注いでおく。 湯冷ましにも上から、空気を含ませるため、少し上から注ぐ。急須と湯冷ましで ...
【300字SS】スープで満たして、溺れるほど。
コンソメスープ味がマイナーだとは知らなかった。 よそで見るのはトマトベースにケチャップ、こってりホワイトソース。ナイフとフォーク。 そうじゃない。 大きめに握った長ネギ生姜豚挽き肉のタネをくったりキャベツで巻いて、 たっぷりのお湯にブイヨン放り込んでぐつぐつ。...
【300字SS】兼業お母さんを休んだ日
お姉ちゃんのご飯は茶色すぎてヤダ。 妹はそう言ってサンドウィッチを買ってきたりパスタをチンしたり、いつも勝手。 おばあちゃんは「洋食屋さん」物ならまだしも、 パンやパスタじゃ納得してくれないし、お父さんはとにかく肉だし、 みんな勝手過ぎる。もう厭。 ...
【300字SS】高度に横滑りした仲良しはBLと見分けがつかない
「毎度ー弁当半分くれ。これ貢ぎ物」 「焼きそばパンと引き替えじゃコスパ悪くね?」 「俺は一日一食くらいうまいメシが食いたいの! なんだよ主婦歴20年のメシマズて。 くーこの普通の卵焼き! いいよなお前んちはー」 「自分で作れば? 桜ちゃんがキラキラまなこで『お兄ちゃ...
【300字SS】ツンデレーション的
「あーん、て食べたい」 「こんな? ただの? ファミレスで?」 「うん」 向かいから蔑みの表情で、フォークにミートグラタンを載せ「あーん」と腕が伸ばされる。 「やるんだ」 「やんなきゃダダ捏ねて捏ねて結局こっちが折れるんじゃない。 ...
【300字SS】週1の儀式
冷蔵庫から取り出した鍋の中では煮干しの水出しがいい色になっている。 そおっと中程までをすくい分け火を入れる。ほんの少し醤油を足して、 うん、いい味。煮干しのお澄まし完成。ベースそのいち。 同じく水出しした昆布の鍋。こちらはそのまま弱火にかける。ふつふつした ...