魔術師とマダム
序章 自分が『人間』という種族に属していると、人はいつ認識するのだろうか。私にとってマダム以前は『人間』ではなかった。誰も私を人間扱いしなかった。年嵩の少年たちに教わった暮らしも、『食べる』『逃げる』『寝る』で構成されていて、衣服はボロの大人服を頭から被っただけ、穴を塞ぐ必...
【300字SS】豊穣の魔女とスウェーデンの春
「ようこそスヴェーリエへ」 微笑みながら現れた少女2人は首を傾げた。 「お婆ちゃんに変装?」 「日本人観光客にばれると面倒なの」 「じゃあ私たち『日本から来た祖母を案内する孫』ね」 「双子の孫のふり?」 「あたしは見た目通りだけどね。あっちは」...
野をゆくは魔女と景狼
デンマークを除いたスカンディナヴィア、そしてスオミ、ラスィーヤの白海付近が私たちの持ち場。大陸と隔てる「おそらく」境界線。広いけれど人口は少ない。魔女も少ない。スカンの《魔女》は長らく21から11に減らしている。12にも満たない。 ...
僕の真摯な魔女
魔女を好きになった。 それはいろいろささやかな、彼女が行う行為を目撃することで。 「最近怪我が多くて。そんなに不注意な方ではないんだが」 「委員長わぁー、恋に盲目なんじゃないすかあ?」 「は? なんだそれは」 彼女の友人は、大人しい彼女にはそぐわない、派手な、アタマ...