【300字SS】豊穣の魔女とスウェーデンの春
「ようこそスヴェーリエへ」
微笑みながら現れた少女2人は首を傾げた。
「お婆ちゃんに変装?」
「日本人観光客にばれると面倒なの」
「じゃあ私たち『日本から来た祖母を案内する孫』ね」
「双子の孫のふり?」
「あたしは見た目通りだけどね。あっちは」
「私は同世代よお祖母様。さ、王立公園へ向かうわ。 蕾を結ばない樹を診て欲しいの」
「動物は得意だけど植物の声は聞こえなくてさ」
「こちらにも《豊穣》はいるでしょうに」
「日本の物は日本人が最適」
「『サクラフブキ』は春の言葉だよね? あの子だけ冬のままなんてやだ」
「案内して」
「そうこなくちゃ」
春のストックホルムを魔女達は連れだって歩く。
1998年に日本から植樹された桜を助けに。