群青の道をゆく(1)
浅海(あさみ)からメールがあった。 2年前に兄の妻になった彼女のメールには、夫の敦一(のぶかず)には言わずに会ってほしいという文面が綴られている。こんな時間に、と慎二(しんじ)は首を捻りながらも了承し、待ち合わせの最寄り駅に向かった。金曜の夜22時、駅前には大きな繁華...
群青の道をゆく(3)
日曜の朝、研究室で身支度を軽く調え、無精ヒゲはそのままに慎二は自転車に跨がり大学を出た。自販機でホットコーヒーを購入し、ゆっくりと駅に向かう。 駅前の駐輪場に自転車を預け、敦一と約束した20分ほど先のターミナル兼ハブ駅に向かう。さすがに地元と違い、休日の午前中から人が溢...
群青の道をゆく(2)
八方塞がり。 そんな時に会わされた高校1年女子は、当時の「同世代女子は敵」という慎二の神経を逆撫でしたし、兄が遠くなった気がして無性に悲しく不快だった。だから兄の取りなしを無視して邪険にし、半ば無視し、早口でその時読んでいた古典物理学概論からマクスウェルの方程式を解説...