【300字SS】冬になったら思いだして
お湯をしっかり沸騰させて、たっぷり空気を含ませる。 小さめの湯飲みに注いで、待って、空の急須に移す。湯飲みは冷まさないように、 また熱湯を注いでおく。 湯冷ましにも上から、空気を含ませるため、少し上から注ぐ。急須と湯冷ましで 練るように繰り返すとお湯は柔らかく、口に含んでも火傷しない温度に落ち着く。 これを浅蒸しの、急須に敷いた茶葉(ちゃよう)の上にゆっくりと落とす。 揺らさぬように、そおっと、待つ。 君が帰ってくる。コートを脱いでソファに投げる。ラックにかけなさいと小言を言う ところまでがデフォ。 そうしてここに戻ってきた君に、美しい水緑色の三口分の幸福を。 芯まで冷えた君をあっためる、すぐに飲み干せる1杯目を、どうぞ。 SS企画《俺のグルメFESTIVAL》 参加 お題 「これが! 俺の! グルメだ!!」 を詰め込んだ、“おいしそう!”な飲食風景