群青の道をゆく(2)
八方塞がり。 そんな時に会わされた高校1年女子は、当時の「同世代女子は敵」という慎二の神経を逆撫でしたし、兄が遠くなった気がして無性に悲しく不快だった。だから兄の取りなしを無視して邪険にし、半ば無視し、早口でその時読んでいた古典物理学概論からマクスウェルの方程式を解説...
花と祝祭
6 ―――1年次 「ただいまあ」 玄関からリビングに声だけ掛け、階段を上がった。先週降った雪がまだ残ってるけど、ここ2~3日は比較的暖かだ。手袋をベッドに放り投げ、ハーフコートを脱ぐ。 タートルネックのセーターの上にジャージを羽織っていると階下から知らない男性の声が両親...
羽化待ちの君
小さな頃から、たまに我が家にやってくる、『おじ』を名乗る男が好きだった。ヒゲだらけだったり埃臭かったり髪が茫々だったりしたが、現れる度美しい小物や珍奇な物、奇妙な刺繍の羽織物などを橙(ともる)にくれるし、気味の悪い昆虫や爬虫類を、美しい写真に納めてきて見せてくれた。グロテス...