野をゆくは魔女と景狼
デンマークを除いたスカンディナヴィア、そしてスオミ、ラスィーヤの白海付近が私たちの持ち場。大陸と隔てる「おそらく」境界線。広いけれど人口は少ない。魔女も少ない。スカンの《魔女》は長らく21から11に減らしている。12にも満たない。 ...
花街ダイニング
眩む光。それから? 声。順番は、たぶん。蓋が開いたんだというのはだいぶたってから。マーナが泣きながら抱きついてきたので、外にいるって気がついた。 その光がササヅキのランタンだとわかったのは次の村に着いて状況を説明するよう求められてから。自分の手も見えない箱の中で、かすか...
淅瀝の森で君を愛す
増築した部屋にお義姉さんとなあが引っ越してきて、バタバタしてるうちに産み月がきて、春菜が産まれて、お披露目も兼ねた結婚式と披露宴を済ませた嵐のような1年が過ぎた。その間にあたしはなあとすっかり仲良くなった。お義姉さんが夏生くんをなあと呼ぶので、うちの家族もそれに習った。...
僕の真摯な魔女
魔女を好きになった。 それはいろいろささやかな、彼女が行う行為を目撃することで。 「最近怪我が多くて。そんなに不注意な方ではないんだが」 「委員長わぁー、恋に盲目なんじゃないすかあ?」 「は? なんだそれは」 彼女の友人は、大人しい彼女にはそぐわない、派手な、アタマ...
Beautiful Days~碧の日々~
+2 days 橙(ともる)と連絡が取れない。 前日に上げたデータが吸い出されていなかった。容量は足りるので今日の分も上げられるのだが、かつてないことにもやりとする。だが時間が悪い。メールだけ送り、翌日を待った。 しかし変化はなく、メールの返事もない。靄は黒みがかり、日...
花と祝祭
6 ―――1年次 「ただいまあ」 玄関からリビングに声だけ掛け、階段を上がった。先週降った雪がまだ残ってるけど、ここ2~3日は比較的暖かだ。手袋をベッドに放り投げ、ハーフコートを脱ぐ。 タートルネックのセーターの上にジャージを羽織っていると階下から知らない男性の声が両親...
羽化待ちの君
小さな頃から、たまに我が家にやってくる、『おじ』を名乗る男が好きだった。ヒゲだらけだったり埃臭かったり髪が茫々だったりしたが、現れる度美しい小物や珍奇な物、奇妙な刺繍の羽織物などを橙(ともる)にくれるし、気味の悪い昆虫や爬虫類を、美しい写真に納めてきて見せてくれた。グロテス...